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「学校?行っているよ」が普通になったHOPEプログラム1期完了報告

「学校?行っているよ」が普通になったHOPEプログラム1期完了報告
  • PLAS 藤原祐希

いつもPLASに温かいご支援と応援をありがとうございます。
海外事業担当マネージャーの藤原です。

2022年の5月からおよそ2年間実施された養鶏による生計向上とライフプランニング支援、英語名HOPE(Household Improvement for Orphans by Poultry activity and career Empowerment support )プログラムが2024年6月に無事終了しました。

HOPEプログラムはケニアのホマベイ郡ビタ準区で、現地NGO団体ビアジェンコをパートナー団体として実施されました。

地域の中でも貧困にあるひとり親家庭から、小学校6年生を育てている家庭、鶏小屋と飼育スペースがある家庭、2年間の研修やモニタリング、カウンセリングに熱意をもって取り組める家庭など、複数の基準からビアジェンコがプログラムに参加する家庭を絞り込み、プログラム前調査、全体オリエンテーションを経て、2022年にプログラムがスタートしました。

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小学校卒業が厳しい、極度の貧困家庭

プログラム実施地域では人口のおよそ6割が一日2.15ドル以下の極度の貧困ラインで生活しています。HIV陽性率もおよそ25%と4人に1人の高い割合であり、小学校に入学しても卒業する前に学費の滞納により、留年を繰り返したり中退することを余儀なくされる子どもたちが後を絶ちません。

子どもたちにとっては、まず今日の晩ごはんはあるか、明日は学校に行けるかが先に立ち、小学校・中学校卒業後の将来の夢を描くどころではない環境にあります。

「自分は何者にもなれない(I will be no one)」と言った男の子がいました。

HOPEプログラムは、このようなプログラム実施地域の中でも、特に脆弱で他の支援からも、支援されにくい家庭を対象とし、各家庭の生計向上とそれにより子どもたちが中等学校への進学を果たし、彼ら・彼女らが将来の夢を描けるようになることを目的に開始しました。

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事業地域の小学校の子どもたち。
制服代、教科書代、ノート・筆記具などは各家庭で用意。

カウンセリング、養鶏研修、会計研修、鶏育成ステップ、もりだくさんな2年間

PLASによるカウンセラー育成研修を経て、カウンセラーとなったビアジェンコスタッフたちは、まず各家庭の保護者と子どもたちとの関係性づくりを実施します。

全7回にわたる個別カウンセリングをはじめとし、2年間のプログラム期間中、ずっと継続して家庭訪問や養鶏のアドバイスなどを行うため、関係性がもっとも大切になってくるためです。

プログラム期間の前半は関係性づくりを含め、まず子どもたち、保護者への個別カウンセリングを月に1回ゆっくりすすめ、併せて、地域の中で様々な職業についている大人たちを紹介するキャリアトークを子どもたちに実施したり、中高等学校や技術学校の進学就学情報を保護者に提供したりと、精神面を含めて進学の準備を進めていきました。

中盤から後半にかけては、養鶏や会計の研修、鶏小屋の設置、そしていよいよひよこの搬入・育成・販売と、養鶏による生計向上も実施していきました。

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保護者とのカウンセリングの一場面。
時には理解しやすいようゲームを交えながら行う。

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鶏へのワクチンの打ち方の講義を受ける。

支援期間の終了後の自立支援も兼ねているこのプログラムでは、養鶏に関しても初回はひよこと餌・ワクチンを提供していましたが、2回目はひよこのみ、3回目は卵を産ませてのひよこの自家ふ化・育成サポートと、徐々に自立へと手を引いていきました。

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鶏へのワクチンの打ち方の講義を受ける。

プログラム前後の比較調査

2年間のプログラムにより、見えてきた変化は大きく3つ。

一つ目は家庭の生計向上で、プログラム参加前に平均835シル(約986円)であった週の収入は、平均1,061シル(約1253円)と1.27倍に増加しました。
また、プログラム開始時には半数しか貯蓄を行っていませんでしたが、プログラム後調査では有効回答者全員が貯蓄を実施できており、平均残高も増加傾向にありました。学費の支払い状況も改善傾向にあり、プログラム開始時には学費支払いを行えない人もいましたが、終了時には遅れつつも全プログラム参加家庭が学費を支払うことができていました。

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プログラム参加前後の学費の支払い状況の変化

二つ目は家族間でのコミュニケーションの向上です。プログラム終了後の調査では、より多くの子どもたちが保護者が学業面でのサポートをしてくれていると回答したり、心や体の相談を行いやすくなったと回答しています。

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親子間でのリプロダクティブヘルスに関するコミュニケーションの変化

三つ目は自己肯定感の大幅な向上でした。保護者ではプログラム開始前の2.7(最大値5)から終了時には3.7、子どもでは2.0(最大値5)から4.2へ、2倍以上の違いが生まれました。

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子どもの自尊心に関するデータ

これは各カウンセリングや鶏の世話、様々なプログラム内アクティビティを通して、保護者や子どもたちが小さな成功体験を重ねていった上に生まれてきた自信が大きく関係しているように思います。

例えば、子どもたちは他の子どもたちへの英語の絵本の読み聞かせを通して、人前での発表の苦手意識がなくなったり、英語の練習とともに使用することへの自信を持てたりしています。2年間、小さなことを積み上げてきた中で、最終的に大きな違いが生まれてきているのです。

「次の挑戦もしてみるつもり」プログラム終了後も自身で挑戦を続けるお母さん

プログラム終了後3か月経ってから、参加者のベアトリスさんを訪ねました。

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ソファのクッション性とくぼみが抱卵にちょうど良いようです。

迎え入れてくれたお家の居間のソファには、「ここを巣にしてしまったの。」と、鶏の卵が8個。ちょうど出かけていましたが、母鶏が家の中で卵を温めていました。

鶏販売もですが、卵の販売も軌道に乗ってきたベアトリスさん。近所にもベアトリスさんのお家の地鶏とその卵は有名になってきており、今朝もすでに卵を買いに3人が訪れていました。

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プログラム終了後に自分で活動を続けることは容易ではありません。

しかし、すでに生活の一部に養鶏が馴染み、ベアトリスさんは次の目標も持っています。

「HOPEプログラムで、子どもとのコミュニケーションと鶏について学びました。学んだことを使い続ける、ということも学びました。私は養鶏事業をもっと大きくしていくつもりです。」

次はBleeding potを購入し、生後1日のひなを購入し1カ月になるまで育ててから販売する、ひよこ販売に挑戦したいと言います。

「もっと(商売を)大きくできると思います」と静かに言い切るベアトリスさんのお顔は、きっぱりとした自信に満ち溢れていました。

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