こんにちは!インターンの柿谷です。
前回のPLASレポートでは、PLASが5年間JICA草の根協力事業として実施してきたFLOWERプログラムの成果の前編をお伝えしました。前編はこちらからご一読ください。
今回はその後編です。
PLASでは各プログラムの成果を可視化するため、開始時調査、中間調査、終了時調査を行っており、今回はそれらの調査から見えてきたプログラム前後の参加者の変化をお伝えします!
FLOWERプログラムで実施した調査からは、大きく3つの変化がありました。
1つ目は、子どもたちの自己効力感が上がったことです。
子どもの自分の未来を信じる力を問うセクションでは、「自分には将来なりたい職業に就ける可能性が、周りの子どもと同じぐらいあるいはそれ以上あると感じるか」に可能性があると答えた子どもは開始時は13.3%でしたが、最終的に74.4%に増加しました。
「自分の未来について明るい希望を持っている」に、「とてもそう思う」と答えた子どもはわずか7%でしたが、37%にまで増加し、「そう思えない」と答えた子どもは0人になりました。
また「私は、一生懸命がんばれば、困難な問題でもいつも解決することができる」に「解決できる」と答えた子どもは14%から65.1%に、「目的を見失わず、ゴールを達成することは私にとって簡単だ」に、「簡単だ」と答えた子どもが11.6%から83.7%に、それぞれ大幅に増加しました。
これらの結果から、カウンセリングや絵本の読み聞かせ活動などを通して、子どもたちが自分も役割を持って何かが出来ると感じ、未来に希望を持てるようになったことがうかがえます。
2つ目は、保護者の子どもへの関心が高まったことです。
参加者の保護者は最終学歴が初等教育の人が6割以上で、中には学校に通ったことがない人もいます。そのため、保護者自身が教育の大切さを理解しておらず、子どもたちに家で勉強よりも家事をさせたり、教育にかかる費用を後回しにしたりしていました。
また、育てている子どもが実子ではなく、孫や養子である家庭も多く、コミュニケーションが十分でない家庭があることも一つの問題でした。しかしプログラムを通して改善されたことが調査によって明らかになりました。
保護者への「子どもの将来や発達について関心を持ち、積極的にコミュニケーションを取る」に「そうしている」と答えた人が16.5%から79.9%に大幅増加しました。コミュニケーションによる家族関係の変化を実感し、積極的に取る余裕ができるようになっています。
また、「教育や養育に関する知識習得と重要性認識」に「知識や重要性の認識がまったくない、あまりしてない」と答えていた保護者は66.9%から23.4%に減少していました。このことから、多くの保護者が教育に対する知識を得て、子どもたちの未来について考えるようになりました。
3つ目の変化は、子どもの教育面です。
前編では自営農業の大幅な収入増加についてお伝えしましたが、その以外の家計の収入である他の畑の手伝いやビジネスも合わせると、直近2ヶ月の家計全体の平均収入が8,373ケニアシリング(約10,215円)から19,632ケニアシリング(約23,951円)となり、2.34倍も増加していることが分かりました。
また、奨学金を受給している子どもはプログラム開始時には1人(約5%)しかいませんでしたが、終了時には約60%の子どもが奨学金を受給するようになりました。
その結果、プログラムに参加した子ども全員が初等教育を卒業し、セカンダリースクールに進学することが出来ました。2年後の修学継続率も93%と、多くの子どもたちが学びを継続することが出来ています。
プログラムに参加したタイタスくんは6人兄弟です。
母親のアドヨさんはシングルマザーで、小作人をしたり穀物を市場で売ったり複数のパートをしながら兄弟を育ててくれていますが、家計は厳しく、タイタスくんの学費が支払えず留年が重なり、16歳で未だ小学校6年生に通っていました。
タイタスくんは医者になりたいというひそかな夢がありましたが、誰にいっても取り合われず、16歳で未だ小学校6年生である現状から、自己効力感を問う質問へはほとんど「全然できないと思う」という返答を返していました。
プログラムを通して、カウンセラーがタイタスくんの医者になりたい、という夢に真摯に向き合い、タイタスくんとアドヨさんに伴走し、タイタスくんが村からほとんど入学者が出ない高偏差値の国公立中高等学校に進学を果たしたためです。
事業開始時小学校6年生だったタイタスくんはその後留年することなく小学校8年生(ケニアでは小学校が8年生までありました。2023年から小学校は6年生までに変更)で卒業し、中高入試を高得点で通り、事業終了時まで、成績でも学費の滞納でも留年することなく中高等学校2年生になりました。
本文と写真の男の子は関係ありません
「あの国公立へ行けたので、タイタスの医者という夢がとても現実的なものになっています」と5年間伴走したカウンセラーが言います。
「引っ込み思案だったタイタスが、最後あたりの訪問では現地語ではなく流暢な英語で話しかけて来て、とても驚いたんだよ」とPLASの現地コーディネーターもにこにこ笑いながら言います。
彼の変化は進学や村のロールモデルという外部からの評価の変化だけではありません。内面も、大きく変化しています。
事業終了時、タイタスくんは「私は、一生懸命がんばれば、困難な問題でもいつも解決することができる」に最大の「いつもそう思う」と返答できるようになっていました。
タイタスくんの夢の実現まではまだ数年かかりますが、着実に前を見据えて、一歩どころか、百歩も千歩も前へ踏み出していっています。
FLOWERプログラムを通じて、タイタスくんのようなロールモデルが地域に多く生まれることによって、これまで夢を描けなかった子どもたちが「彼のようになりたい!」「自分も頑張れば夢をかなえられる!」という希望を抱ける社会が実現することに気づきました。このような社会こそが、私たちが目指す前向きに生きられる社会をつくることに繋がるのだと、実感できたプログラムでした。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
引き続き、PLASの活動を応援していただけますと幸いです。
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