こんにちは!PLASインターンの柿谷です。
PLASが2020年4月からJICA草の根協力事業として実施してきたFLOWERプログラムが、2024年9月に終わりを迎えました。
みなさまからのあたたかい応援とご支援により、すべての子どもたちが進学ができるようになったFLOWERプログラムの5年間の様子を前編と後編に分けて、お伝えします。
本プログラムでは、就学年齢にあるHIV/エイズに影響を受ける孤児や貧困家庭に暮らす子どもが就学や就労の選択肢を増やすため、子ども50名とその兄弟姉妹150名、保護者50名を対象とし、相談・カウンセリング支援、農作物の栽培技術向上による経済的自立支援を行いました。
プログラムが行われた地域では、成人(15 歳以上)の HIV 感染率が 25.7%と国内で最も高く、人口の約6割が1日2.15ドル以下の極度の貧困ラインで生活しています。
プログラム実施地
プログラム開始直後の2021年5月に実施した調査では、初等教育に通う子どもを持つ家庭の平均月収が3,768ケニアシリング(約4,274円)でした。また、自作農産物の販売や他家庭の畑仕事の手伝いによる収入は、平均して月469ケニアシリング(約572円)にとどまりました。
これは、日々の食料確保が困難になるレベルの収入です。過去12ヶ月に家計が苦しく、食料などの支払い補助を経験した家庭は94%にのぼり、そのうち42%の家庭では10回以上支払いに困窮していたことがわかりました。
子どもたちは、家庭の経済的な理由や親の教育への理解不足から、留年や中退といった課題を抱えていました。例えば、初等教育を卒業し、セカンダリースクールなどの中等教育に進学できる子どもは42%であり、さらに進学したとしても、就学を継続できているのはわずか32.5%です。
そこで、PLASでは子どもたちが教育を受けられ、子どもと保護者が前向きな将来を計画できるよう、プログラムをスタートさせました。
5年間におよぶプログラムは、まずマニュアル作成から始まりました。
マニュアルは、PLASの職員や現地スタッフのこれまでの実務経験や学術論文を基に作成され、英語が堪能なインターン生が英訳を担当し、イラストが得意なインターン生が表紙や挿絵を手掛けるなど、インターン生も主体的に関わり、みんなで作り上げました。
このマニュアルを用いて、カウンセラーの育成研修をフォローアップを含めて13日間行う予定でした。しかし新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、フィールドワークができないなど、予定変更を余儀なくされることもありました。
その後、全研修が終了し、カウンセラーたちは保護者、子どもたちへカウンセリングを開始しました。
子どもたちへのカウンセリングは、「自分はどんな子であるのか。どんなことをしたいと思っているのか。」といった自己理解を深めるところからスタートしました。他にも、自己効力感を得るため、地域の小さな子どもたちに向けて読み聞かせ活動も行いました。
絵本を読む子どもたち
保護者には、経済的自立ができるように家計管理のスキルや貯蓄方法、子どもたちが学校に通い続けられるように進学に関する情報、そしてより良い家庭環境を作るためのアドバイスなど、さまざまなことを伝えました。
その結果、親子関係に変化が見られました。
「キャリアガイダンスとカウンセリングを受けるようになってから、宿題について話してくれるようになりました。たまに宿題を「分け合いっこ」したりもします。一緒に問題を考えるようになり、親子関係も良好になりました。」(パメラさん)
カウンセリングの様子
「カウンセリングを受け始めてから、3人の子ども達とのコミュニケーションが取りやすくなりました。特にナエラは第二次成長の難しい時期であり、身体や精神の変化について話し合えるのは良いことだと思っています。」(ジョセンタさん)
こういったカウンセリングが終了後、家庭で農業を始めるための準備に移っていきました。庭に縦横30mのフェンスを立て、その中で作物を育てます。フェンスを設置することで、ロバやその他の家畜から作物を守ることができます。
農業研修では、農業と植林を組み合わせたアグロフォレストリーの方法を学び、農地の作り方や畝の立て方、たい肥の作り方、害虫対策などを講義と実践を通じて習得しました。また、水汲みのロバを配布し、往復の回数を減らすことで、湖から自宅までの重労働の負担を軽減するようにしました。
2023年からは「エクスチェンジ・ビジット(相互訪問)」という取り組みを開始しました。
農業を通じて生計向上に創意工夫を重ね、成果を上げている畑を他の参加者たちが訪問します。収量を増やす工夫やレモングラスなどの珍しい作物の栽培方法、畑を広げるための工夫など、さまざまな情報交換を行い、その結果、「もっと頑張りたい!」という気持ちが刺激されました。
エクスチェンジ・ビジットの様子
参加者同士がお互いの畑を訪問し、学び合うことで、新たな可能性が広がるだけでなく、訪問された側も「誰かの手本になれた」と自信を得ることにつながりました。
パートナー団体のビアジェンコスタッフが近況をヒアリング中
こうして実施してきたプログラムにより、自営農業による2か月の収入は100ケニアシリング(約122円)から2,996ケニアシリング(約3,655円)へと大幅に増加し、農業収入はなんと約30倍にもなりました。その結果、すべての子どもたちが初等教育終了後にセカンダリースクールや職業訓練校に進学できるようになりました。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
後編は、プログラムによって変化した保護者と子どもたちについて詳しくお届けします!
-----
あなたができる方法でアフリカの子どもたちが前向きに生きられる未来をともにつくりませんか?
今回のみの寄付はこちらから
マンスリーサポーターの登録はこちらから
イベントに参加はこちらから