こんにちは!海外事業プログラム・オフィサーの牧野です。
日頃よりPLASの活動をともに支えてくださっている皆さま、関心を寄せてくださっている皆さまに、心より感謝申し上げます。
PLASとパートナー団体のギバーは、養鶏による経済的自立と相談・カウンセリングの支援を届けるRISEプログラムを、ウガンダ共和国ムコノ県にて2024年4月〜2026年3月までの2年間にわたり実施してきました。
今回は、RISEプログラムの修了報告をお伝えいたします。
ウガンダの農村部では、多くの子どもたちが貧困や家庭環境、思春期の課題などが重なり、学校に通い続けることが難しい状況にあります。
プログラムの対象となった保護者の90%は学校に通ったことがないか、小学校の段階で中退しており、安定した収入を得るためのスキルを身につける機会がありませんでした。そんな家庭の状況を見て、自分の将来を早々に諦めてしまう子どもも少なくありません。
家庭全体がさまざまな困難を抱えているため、RISEプログラムでは以下に取り組みました。
プログラム実施前の調査より、プログラム参加者の70%が3人以上の子どもを育てていますが、農業で得られる平均月収は25,000シル(約7ドル)で、他の農家を手伝ったり副業のバイクタクシーの運転手や漁業などから得られる平均月収も5,000シル(約1.3ドル)と、大変厳しい家計状況であることが分かりました。

赤土とトタンで作られた参加者の家。雨に弱く傾いてしまっている。個室もない家に家族7人で住んでいる。
相談・カウンセリング支援では、PLASが策定したカウンセリングマニュアルを元に、親子両方にカウンセリングを実施しました。
子どもに対しては、自己肯定感や自己効力感の醸成を目指して、自己理解、性と生殖の健康と権利(SRHR)に関する知識などを学び、社会や地域との関わりを実感する活動や将来のキャリアプランを考える活動を行いました。

様々な仕事についている人生の先輩たちの話を聞くキャリアトークの様子。仕事に至るまでの道のりを知って、いま自分がやるべきことを考え、将来の選択肢を広げる時間です。
保護者は、保護者の行動や意識の変化を通じて、子どもの成長環境を改善することを目指し、子どもの発達と関わり方や親子間のコミュニケーション、家計管理の方法まで幅広く学びました。子どもと同様に、SRHRのトピックについても扱いました。

プログラム参加者のオリバーさんと話す、ギバー代表のスーザン
カウンセリングを行った結果、「子どもの教育に対するビジョンがある」と回答した保護者の割合が4.8%から31%に、「子どもの将来の教育や夢について子どもと話している」と回答した人の割合も4.8%から38%と6~7倍に増加しました。
「女の子として自分自身を守る方法や、家庭で困難があっても自分を見失わず、規律を持って過ごすことの大切さを教えてもらいました。お金や助けを得るために、危険な方法に頼らなくてもいいと学びました」
「学校に通い続けることが大切だと教えてもらいました。勉強を続ければ、自分が望む未来を手に入れることができると学びました」
カウンセリングを経験した子ども達は、自信を持ってこう語ってくれました。
鶏など家畜の飼育はウガンダでは一般的に行われていますが、知識なしにやみくもに育てている家庭も少なくありません。
1羽の雄鶏と3羽の雌鶏を配付後、専門家による研修やフォローアップを実施し、プログラム参加者自身が効率的に鶏を育てるスキルを得て、少しでも収入を増やし、必需品の購入に充てたり、ヒナの購入費用に回して養鶏を循環できるように後押ししてきました。
その結果、家計管理を行う家庭が10%から60%に増加し、家計を管理する習慣がつき始めていることが見えてきました。
また、直近2ヶ月間で支払いが困難だった費目について聞いたところ、プログラム実施前は「学費」と回答していた家庭が55%でしたが、プログラム後は25%までに減少しており、卵や鶏の販売から得られた収入を学費の支払いに充てられているという変化が見られました。

ただ、全て順調だったわけではなく、養鶏は病害、野生動物による被害、盗難被害など多くの苦難に直面したこともあり、残念ながら2年という期間では貯蓄額の大幅な改善の兆候は見られず、依然として学費が支払えなかったり、必需品の購入が困難な家庭が多くあるという課題は残りました。
しかしながら、プログラム参加者同士がサポートやアドバイスする動きが見られ、コミュニティで助け合いの精神が醸成されるという良い変化も生まれ、4羽の鶏という小さなスタートでしたが、着実に変化が起きました。

プログラムを通して得た経験、養鶏の成功例などを共有し合うピアレビューセッション。参加者同士で様々な意見が交わされました。
グレイスさん(仮名)は、ウガンダの農村部で暮らす16歳の少女です。
父親は大工、母親は日雇いの仕事をしていますが、収入は不安定で、家計にはほとんど余裕がありませんでした。グレイスさん自身も、砂糖や食べ物を手に入れるために周囲の人を頼らざるを得ない状況にありましたが、父親は、グレイスさんが友人や男の子と関わることを快く思っておらず、帰宅が遅くなると叩かれることもあったといいます。
「自分でも働いて家族を支えたい」と考えていましたが、その思いと家庭内の閉塞感との間で苦しんでいました。グレイスさん自身、「自分には未来がない」と感じるほど、将来に対して悲観的になっていました。
そしてグレイスさんは、突然家を出てしまいました。

プログラム実施地に行くまでの道のり
そこで、ギバーのカウンセラーたちは、家庭訪問や保護者との対話を続け、学業を続けることや親子のコミュニケーションの大切さについて伝え続けました。
数か月後、家に戻ってきたグレイスさんに対してもカウンセリングを行い、学校に戻り勉強を続けることの大切さを伝え続けた結果、彼女は生活習慣を整えるためにも、寄宿学校へ通い始めることを決断しました。
依然として家族の生活は厳しい状況ですが、それでも、以前のように「未来はない」と諦めていた状況を変えることが出来ました。
継続的な家庭訪問やカウンセリングを通じて、「自分は失敗した人間ではない」「まだ未来を選び直せる」と感じられるようになったこと。その小さな変化が、グレイスさんが再び前を向く力につながっています。
パトリックさんとクリスティーンさん親子にも、ポジティブな変化が起こっていました。

パトリックさんとクリスティーンさん親子
RISEプログラムに参加する前から、パトリックさんの家庭では鶏を飼っていましたが、1~2羽程度で収入にはつながっていませんでした。
プロジェクトを通して、パトリックさんは養鶏について本格的に学び始めます。
ギバーのカウンセラーや養鶏研修を通じて、野鳥に襲われにくい飼育方法や家にある食材をエサとして活用する方法など、実践的な知識を身につけていきました。
「以前は、鶏が増えれば増えるほどエサ代がかさむと思って、飼育数を増やすことを躊躇していました」
そう話すパトリックさんは、キャッサバや野草など自分の畑でも取れるものをエサとして与え、今では20羽以上の鶏を育てるまでになりました。
この家庭に生まれた変化は、養鶏だけではありません。パトリックさんは、プログラムのカウンセリングを通じて、子どもたちとの関係が変わったと話します。
以前、娘のクリスティーンさんは「親の言うことは時代遅れだ」と考え、親の言葉に耳を貸さず、家庭の中でも衝突が多かったといいます。
しかし、カウンセリングを受けたことで、クリスティーンさんは少しずつ変わっていきました。
親が言っていることとカウンセリングで教わることが共通していたことから、親は自分の自由を奪うためにあれこれ言っているわけではなく、本当に大切なことを教えてくれていたのだと理解するようになり、親の話を聞くだけでなく、自分の考えも以前より素直に話すようになったといいます。
一方で、クリスティーンさんの生活は今も決して順調というわけではありません。今の収入では学費や通学のための交通費を十分に支払えず、学校に通ったり中断したりを繰り返しています。
それでも、「学校が好き。将来は医者になりたい」と笑顔で語り、学校に行けない期間も自分で勉強を続けています。
パトリックさんは最後に、こう話してくれました。
「将来は500羽の鶏を育てたい。そして、子どもたち全員に教育を受けさせたい」
小さくても収入が生まれたこと。親子が向き合う時間が増えたこと。子どもが夢を諦めずに持ち続けていること。これらはすぐに大きな成果にはならないかもしれませんが、前向きに生きていくための大切な一歩となっています。

クリスティーンさんは、鶏に名前をつけて大切に育てている。売ってしまう時はちょっぴり寂しく感じるそう。
ギバーにとって初めての養鶏+カウンセリング。もちろんその道は決して平坦ではありませんでした。プログラム実施地の1つであるニャンジャで配付した鶏が全滅してしまったことは、プログラム実施中に起きた最大の困難でした。
最初に配布した鶏の多くが、地域で広がっていたコクシジウムや鶏痘(けいとう)などの感染症の影響を受け、次々と死んでしまったのです。
この問題は、単に鶏を失ったというだけではなく、生計向上への期待を失ったプログラム参加者とギバーの間の信頼関係にも影響しました。ギバーのスタッフが地域から厳しい言葉を向けられたり、家庭訪問をしても以前と違う態度で距離を置かれてしまい、きちんとコミュニケーションが取れない時期もありました。
それでもギバーは諦めず、補填のために出来る限りの追加支援をしたり、信頼できる地域内の鶏業者からの仕入れへと変更するなど、少しずつ立て直しを進めていきました。
参加者の一人はこう話してくれました。
「鶏が全部死んでしまったのはとても悲しかったです。でも、いつかまたやり直せると信じています。」
その結果、鶏の全滅から半年ほど経った頃から地域との関係も良好になり、「村を訪問するのが怖い」と感じていたギバースタッフも、今ではプログラム参加者の皆さんとすっかり打ち解け、プロジェクトの修了を惜しむほどにまでなりました。

プログラム参加者の状況の聞き取りをする、ギバースタッフのハリエット
プログラム参加者とギバーの関係性の改善は、プログラム後の調査にもはっきりと現れました。「ギバーと自由に気軽に話せる」「ギバーは自分の悩みや困りごとを聞いてくれる」という質問に「非常に」と回答した割合が10%以下だった状態から60%を超えるまでになりました。

プログラム前後のプログラム参加者とギバーと関係の変化を表す円グラフ
この経験は、ギバーにも大きな変化と自信をもたらしました。
プログラム修了に伴う評価ミーティングを実施し、スタッフからは「以前はプログラム参加者とどう話をしたらいいのか、プログラム前後の調査などもやり方を全く知らなかった。今は自信を持ってプログラムを運営できるようになり、フィールドにも出ていけるの!」
「ギバー内のチームワークが強まった。PLASからの継続的な支援に励まされ、自信をつけることが出来た!」と、プログラム運営を通して成長を実感している様子でパートナーとして、とても頼もしく、彼女たちの今後の活躍がとても楽しみであり、誇らしく感じました。

評価ミーティングの様子。うまくいったことも想定外だったことも、皆でオープンに振り返った。